大判例

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東京地方裁判所 昭和34年(モ)14132号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕本件土地建物はもと山本実彦の所有で、同人が昭和二七年七月一日死亡したので、妻たる債権者山本、嫡出子たる債権者内川、申請外山本俊太、同五味さよ子、同山辺美佐枝、認知された子たる藤原白文子、同円山公子のため相続が開始されたが、そのうち山本俊太が相続を放棄し、一方藤原、円山が本件土地建物に対する共有持分を放棄したかに争いがあつて、東京家庭裁判所に遺産分割調停事件が係属中であつたところ、五味、山辺の両名が昭和三四年七月一一日債務者朝日観光に対して本件土地建物の共有持分を譲渡してしまい、その持分移転の登記がなされた。その結果、債務者両名が本件土地建物を共同で占有することとなつたが、債権者両名は本件において、債務者等の本件土地建物に対する占有解除執行吏保管、現状不変更を条件とする債務者使用の許容、占有移転合有名義変更禁止等の仮処分決定を求めた。その理由として主張したのは、(1)債権者等は民法九〇五条の規定による相続取戻の意思表示をしたから、この取戻権の履行として本件土地建物明渡請求権がある、(2)相続財産は共同相続人の合有に属し分割前にその一人で持分を譲渡することができないから前記五味、山辺のした持分の譲渡は無効である、(3)本件土地建物については債権者等も持分権者として持分に応じた全部の使用収益権があるのに、債務者朝日観光がこれを専用して、債権者等の使用収益権を妨害しているので妨害排除請求権がある、(4)共有物の管理は持分の価額の過半数で決定さるべきところ、債権者等の持分権は九分の五に達し、その意思のみで管理方法を決定しうるのであるが、その管理方法については将来財団法人山本育英会を設立してこれに本件土地を賃貸すべき協議が成立しているから、この協議に基いて本件土地建物明渡請求権がある、以上の四点である。

判決は、右(1)、(2)の主張を排斥したが、(3)の主張を容れて、本件仮処分決定を認可した。その説くところは次のとおり。

「債権者等および債務者朝日観光は、各々、持分の割合はともかくとして、本件土地建物の共有者の一人であること前叙のとおりであり、各々本件土地建物の全部につき持分に応じた使用収益権を有する。しかし、民法第二四九条の権利は、共有者の内部関係において、未だ抽象的な権利であつて、それに基いて直ちに、共有者の一人が他の共有者に対し、自己の意図する管理方法により使用収益すべきことを強制し得るものではない。さらに、これを具体化し、共有物を使用収益するについては、共有者全員の協議の上持分の価格の過半数により定めることを要し、右決定に基き一人の共有者が使用収益することを他の共有者が妨害した場合でなければ、その共有者に対し妨害排除を請求し得ないものといわなければならない。しかし、共有者の一人が他の共有者の共有持分を否定し、全く、他の共有者の使用収益を認めず、管理方法についての協議にも応じないで自ら共有物を使用しているような場合には、共有物に対する不法占有者と同視すべきであるから、他の共有者は共有物を占有する共有者に対し、民法第二四九条の共有物の持分にもとづき、その妨害排除として共有物の引渡を請求し得ると解するを相当とすべく、本件において、債権者等が本件土地建物の共有者であつて、その使有収益権を有することを債務者朝日観光において特に争うことをしないかの如き外観を供えているけれども、……を合せ考えれば、債権者山本銈は、永年本件建物に居住していたものであるにもかかわらず、山本俊太のため意思に反して本件建物からの立退を余儀なくされ、これから程遠からぬ債権者内川澄子夫妻のもとに同居しているものであり、債務者朝日観光の代表者はこの間の事実を知りながら前認定のとおり共有持分の譲渡を受け、本件土地建物を専用するにいたつたものであることを認めることができ、また……を綜合すると、債務者朝日観光が本件仮眠所の構造上の危険を理由に、本件車庫を取壊そうとしていることが一応認められ、共有物である本件車庫を取壊すことは共有物に変更を加える行為であるから、債務者朝日観光が本件車庫を取壊すためには、共有者の一人である債権者等の同意を必要とするところ、その同意を得たことが疏明されないばかりでなく、弁論の全趣旨からすれば、債権者等がその同意をしていないことが認められる。以上認定の事実からすれば、債務者朝日観光は、単に共有持分にもとづいて本件建物を保管するものでなく、債権者等の共有持分にもとづく使用収益権を全面的に否定して、管理方法の協議を拒み、恰も単独所有権者であるかの如く本件土地建物を専用しているものであつて、債務者朝日観光と共同使用中の債務者塩田についても同じことをいいうべく、結局債務者等は債務者等の持分自体を争うと同様の態度でその使用収益を妨害しているものというべきである。したがつて、特別の事情がない限り、債権者等は、債務者等に対し共有者の共有物に対する管理権にもとずく本件土地建物の妨害排除として、その明渡を求めることができるものといわなければならない。)

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